「1997年のデビュー・ヴィンテージ以来、グラシアは、サンテミリオンの最上のガレージワインの1つである。非常に生産量が少ないことを考慮すれば、価格が高いのは明らかである。しかし、グラシアの場合は、単に品質の問題である。」ロバートパーカー氏「ボルドー第4版」

前世紀末から今世紀初頭にかけてサン・テミリオンで全盛だったガレージワインの1つ。だが、この新生クリュが他の多くの同格ワインと異なる点は、名声が衰えることがなく、近年このアペラシオンによく見られるようになった非常に独特かつ個性的なスタイルを、既に確立していたということである。ワインは豊満で、円熟味があり肉厚、時に甘美で心地良く、若いうちから魅力を発揮するボディが特徴的。芳醇な樽香と品質の高さが際立ち、心から楽しめる。カーヴに長期保存せずに、この官能的なスタイルを早いうちに楽しむ方がよいのではないかと思うほどだ。」 ル・クラスマン

歴史的建造物修復名高い専門家であるミシェル・グラシア氏。 オーゾンヌ、シュヴァル・ブラン、テルトル・ロートブッフ、レオヴィル・ラスカーズ、ラ・モンドット等数多くのシャトーの修復をも手掛けてきたグラシア氏。最高のワインがこの世に生まれ出る様子を否応なく見届けることになった彼は、自分の中にワインへの創作意欲が湧き起こるのを押さえきれなかった。彼は言う、「何をするべきか、頭だけではなく、おなかで感じるんだ。たぶん僕は感覚的に感じ取る力があるのだろう。買った畑を手入れしていたとき、畑が僕に『ありがとう、これで呼吸ができる』と言ったような気がしたんだ」。彼は情熱だけでなく、深い思慮があった。成熟度を増すべく、サンテミリオン最高となる樹高190センチに仕立てた。2haにも満たない畑にもかかわらず、収穫には40人、それも善し悪しを見分ける目と細かい作業に優れた建築美術の修復技術者を雇った。ジャン・リュック・テュヌヴァンに倣って手で除梗し、さらにそれを篩いにかけて、ブドウの実以外のいかなる不純物の混入をも許さなかった。そうやって生まれたグラシアを真の傑作とするものは、天の声をワインへと反映させることができるミシェルの感性であり、美を具現化させようとする真摯な努力であり、その人間的行為の結果として立ち現れてくる品性なのである。ワイナート誌