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ロバート・パーカーが三ツ星に掲げる造り手、ドメーヌ・フランソワ・ゲルベ。ヴォーヌ・ロマネに本拠地を置くこのドメーヌは、現在は2人の姉妹、マリー・アンドレ女史とシャンタル女史によって運営されている。ドメーヌは1947年に彼女らの父親であるフランソワが興し、1983年からすでに2人が引き継いでいます。二人が造り出すワインはすでにパーカーからも高い評価を得ており、女性だけでドメーヌを引き継ぐことは、ブルゴーニュでも先駆者として一目置かれる存在となっております。 現在はシャンボール・ミュジニー、ヴォーヌ・ロマネ、エシェゾー、クロ・ド・ヴージョに合わせて15ヘクタールの畑を所有し、年産70000本を生産しております。彼女達は畑仕事も自ら行い、極めて有機栽培に近い自然派。醸造、瓶詰め、ラベル貼りまで全ての作業を行っております。その仕事には女性らしい繊細さが見られ彼女達のスタイルとなって表れています。 ル・クラスマンは、まだあまり知られていない小さなドメーヌだが、ヴォーヌ・ロマネ村で上質のワインを造ってる。中でも、レアのニュイ・サン・ジョルジュ村に接する場所に所有している2haの区画が見事で、ここから造られる村名ワインがこのドメーヌの個性が最もよく表れている。しなやかで優雅なワインを造らせたら、ジェルベ姉妹の右に出る者はいないのだが、その醸造スタイルがヴォーヌ・ロマネのテロワールと実に相性がいいというところがこのドメーヌの強みだろう。一方「オート・コート・ド・ニュイ」の赤は醸造が丁寧に行われているものの、ブドウ自体の成熟不足がはっきりわかる出来になることもしばしばである。残念ながら2000年と2001年もそうなってしまった。同じ年でもさすがにヴォーヌ・ロマネは素晴らしく、「オー・レア」は繊細そのもの。	ヴォーヌ・ロマネ 2009年 ドメーヌ・フランソワ・ゲルベ “オー・レア”に程近いヴィラージュ区画に所有する平均樹齢40～50年のピノ・ノワールを使用。年産6000本のみ造られる人気ワイン！ 香り豊かでオーク樽のニュアンスを感じさせ、柔らかな果実味と程よい酸の素晴らしいバランスに、赤い果実や花、肉にスパイス、そして滑らかなタンニンのヴォーヌ・ロマネ。
ヴォーヌ・ロマネほどのメジャー生産地ともなれば、そこに在するドメーヌ名をほとんど知っているといったマニアな愛好家は少なくないと思う。それではここで紹介するフランソワ・ジェルベはご存知だろうか。正直、僕は一昨年前に始めて名前を聞き、この特集の事前準備を始めるまで飲んだことすらなかった。しかしいろいろと調べていくうちに、この生産者は明らかに古典的なブルゴーニュの、しかし現在の味わいをしっかり持ったワインであるということを知った。しかも値段は安い。05年はまだ価格が決まっていないが、直近の04年のACブルで2,300円ほど、村名ヴォーヌ・ロマネで4,600円前後だ。ほぼ無名に近いので05年も法外な値上がりはまずないだろう。 見事なワインたちだった。「ヴォーヌ・ロマネは絹のような滑らかさを持つ」とは様々な文献での決まり文句だが、本当に、正にそうなのだ。下位のワインからグランクリュまでワインたちは皆、絹のようなテクスチャーを持っている。どこまでも優しくて滑らか、そして味わい深いのだ。 ブルゴーニュでは近年、濃厚なワインからエレガントなワインへとシフトする生産者がとても多い。しかし、このフランソワ・ジェルベは、ふたりの姉妹がドメーヌを父から継承した1983年以降、ずっとこのエレガントなスタイルなのだ。あくまでも優しいワインは女性ならではのものだろうか。確かに同じヴォーヌ・ロマネのジョルジュ・ミュニュレ=ミュニュレ・ジブールもずっとエレガントなワインだし。 ここでジョルジュ・ミュニュレの名前が出たところで彼女たちも姉妹でありフランソワ・ジェルベと同じだが、このジェルベ姉妹はヴォーヌ・ロマネでは女性ヴィニュロンの第一号である。 ともかくエレガントなワインの理由を尋ねた。 姉はマリー・アンドレ・ジェルベ、妹はシャンタル・ジェルベ。女性の年齢を書くことははばかられるが、マリー・アンドレは47年生まれ、つまり60才である。写真を見てほしい。この若々しさを！ マリー・アンドレが25才の1972年に父と一緒にワイン造りを始め、その6年後に妹のシャンタルもドメーヌに参画、前述したように83年にふたりはドメーヌを継承した。父の頃はワインをほとんどネゴシアンに売っていたので、ワイン自体に明確なスタイルはなかった。そこでビン詰めを始めた時に、ふたりで話し合いながら今のエレガントなスタイルにもっていったのだ。「これは自分たちの好みのスタイルなのです。あくまでも繊細なワインが好きで、硬いタンニンやピジャージュの多めのものは好きじゃないんです」マリー・アンドレが快活に語ってくれた。 彼女たちは発酵なども自然にまかせているし、人為的介入も極力避けている。ともかく過剰なものは好きじゃないのだ。もちろん栽培は自然なアプローチ。リュット・レゾネを採用し、農薬はほとんど使用せず、殺虫剤などは一切使っていない。また今年から肥料も完全に有機に切り替えた。 これが優しくて、絹のような舌触りを持った美味しいワインが生まれる理由だ。そしてこの味わいは明らかに今の私達の渇望感を癒してくれる。 しかし、以前からずっとこのスタイルでやってきたということは、米国ニーズに合わせたパーカースタイルの濃厚ワインがブルゴーニュを席巻していたとき、窮地にならなかったのだろうか。 「私たちのワインの販路は主にフランス国内の個人顧客なのです。彼らは米国のスタイルとは関係ないので、全く影響はありませんでした。」なるほど、パーカーに踊らされたのは生産者と私たち日本人を含む、フランス国外の愛好家だった。 「毎年毎年、お客さんのことを考えて最善を尽くす」これがフランソワ・ジェルベの哲学である。ふたりのお子さんは共に女性だ。この従姉妹関係にあるふたりがドメーヌを継いでくれそうなので、これからもフランソワ・ジェルベらしい、また女性ならではの優しいワインがヴォーヌ・ロマネから絶えることはない。毎年毎年、私たちを悦ばせてくれるのだ。 いつものことながらドメーヌを訪ねると香水姉妹（僕と堀女史は彼女達をそう命名している）ニコニコと迎えてくれる。さて、フランソワ・ジェルベの07年のワインは確かに07年的だ。ヴィンテージキャラが見事にトレースされており、小ぢんまりとしたものだが、やはりここのワインはとても優しくてスタイルがいい。実際のところ評価自体はあまり高くないが、どのワインもこのドメーヌらしい優しさに溢れたきれいなものだ。ギュッと目が詰まっているとか、求心力とかは少ないが、全域にわたって瑞々しく美しいスタイルだ。ここの07年はキチンと評価されるべきものだし、愛好家は購入しても決して後悔しないだろう。つまり、得点ではあらわせない魅力に溢れているということなのだ。そういったワインを生み出すべく、彼女達は困難なヴィンテージに対して畑の選果を慎重に行い、醸造面では抽出が過ぎないようにピジャージュの回数を減らしたりと、絶え間ない努力を積み重ねた。)