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ディディエ・モンショヴェは、自社ビン詰めを開始した1989年からビオディナミを開始したというブルゴーニュにおけるビオディナミの草分けの一人で、DRC、ルフレーヴ、コント・ラフォンなどとともに大師匠ピエール・マッソンに直接師事したブルゴーニュの第一グループに属します。 また、ドメーヌを創業する前はブルゴーニュの2大醸造コンサルティング会社のひとつBIVB社の看板エノローグ（彼の後が今日も活躍するエリック・グランジャン）として何百軒という優良ドメーヌを指導してきており、醸造についてもブルゴーニュを代表するプロ中のプロです。 今日も、親友のダヴィッド・レクラパールをはじめ、年間100人以上のフランス中の若手ビオディナミストがアドバイスを求めて彼を訪れ、栽培醸造両面で、後進に惜しみない支援の手を差し伸べています。 そんな彼のワインは、体にすーっと吸収されるようなみずみずしさと、底から湧き上がってくるような果実の滋味に満ち溢れており、土壌の生態系バランスの改善や根の深さといった「ビオディナミを行う意義」が、頭ではなく体で理解できます。	ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ボーヌ ルージュ 2009年 ドメーヌ・ディディエ・モンショヴェ コート・ド・ドールの優れたワイン産地で、マランジュ村からボーヌ村に到る道の西側、コート・ドールで一番美しいロミニポーのお城が眺められる標高の高い（Huat）後背地の村で造られるブルゴーニュACピノとだけ表記された、ワインより範囲の限定されたハイクラスの小地域名称ワイン。ナントー村の2.5haの畑から平均樹齢20年のピノ・ノワールを収穫し、12ヶ月樽熟成。しっかりとした骨格がありながら、フレッシュ感のあるキレイな酸。シルキーなタンニンとエレガントな味わい。ディディエ・モンショヴェらしい造りの素晴らしい逸品です。
長髪でカッコよく、空手着が似合いそうなディディエ・モンショヴェは孤高のビオディナミストだ。オート・コート・ド・ボーヌのナントゥーというマイナーな地所にドメーヌを構え、思いっきりピュアで味わい深いワインを造っている。 彼のワインは純粋で、繊細で、旨みにあふれたもの。ビオであろうがなかろうが、明らかなる「新ブルゴーニュ」だ。AOCを超えた品質を持ち、価格もその品質からすると極めて安い。もっともっと日本の愛好家に飲んで欲しい最有力造り手の1人だ。 ところでずいぶん前に彼のワインを飲んだことがあるが、97か98のオート・コートだ。その時の印象は正直言って、良いワインだけど感心しないというものだった。理由はひとつ。ビオ臭が結構あったから。　しかし最近の彼のワインは見事に変貌をとげた。ビオ臭など微塵もない、あくまでもナチュラルで澄み切った美しい香りだ。彼のカーヴで既にビン詰めを終えた05年を試飲したが、そのピュアな美しさ、おいしさに思わずため息が漏れた。「こんな素晴らしいワインが、まだ日本で無名に近いなんて…」。いや、もちろん自然派ワイン愛好家間ではその名前はつとに有名だ。しかし一般的なブルゴーニュファンでの知名度はかなり低いだろう。是非経験して欲しい。この偉大なブルゴーニュワインを。 彼は、体を使う畑仕事とアーティスティックな流れを伴う醸造、その両者の融合を見出せるワイン造りが大好きだ。その彼の孤高の歴史をヒモ解いてみたい。 彼の父はワイン生産者、よって彼も幼い頃からそれを目指した。ワイン造り、とりわけ自然なアプローチに対してかなり早熟だった彼は、20歳の頃に既にビオディナミでワイン造りを始めたかったという。しかし父親はビオに対して懐疑的で、そんな彼に父は自分の畑を使わせなかった。よって仕方なく最初は他の畑を借りてワイン造りを始めるしかなかった。 84年に0.5haの自らの畑を初めて取得。その後、ブルゴーニュ委員会で栽培指導官として教鞭をとりながら、93年に現在の場所にドメーヌを建てた。そして「畑ではなく土地を買って」自分で開墾しながら、ひとりでコツコツとビオを実践してきたのだ。しかし、ブルゴーニュのビオディナミ元祖の人達とはずいぶん情報交換をやったようだ。ピエール・マッソンに教わったブルゴーニュ第一グループ(DRC、ルフレーヴ、コント・ラフォンなど)に彼も加わっていた。 現在では彼を慕ってくる自然派生産者が多く、ボージョレにおけるマルセル・ラピエール的立場に近いともいえる。今のブルゴーニュにはこういう先導者が限りなくない。 ちなみに現在彼が持っている畑に彼の父の畑はない。つまり父の跡は継がずに、このドメーヌは彼がひとりで設立したものだ。ただ、誤解のないように言っておきたいが「孤高の生産者」と言っても彼は全くガンコでも偏屈でもない。実に気が優しく思慮深い、とてもいい男なのだ。「人というものがワインに表れます」と彼は力を込めて語っていたが正にその通りで、彼のワインは誠実な味がする。 そんな誠実な彼は言う。「ビオディナミを始めたのは、ブドウ造りのためでしたが、今は環境面に対しての配慮という意味でビオが重要です。このままいくと自然環境が大変なことになります」。そして彼はそれを実践している。「畑の中は全てブドウの樹で埋め尽くしていません。生態系の維持のために、森や空き地などを残しています」。彼のオート・コートの畑に行った。その通りだった。 先にアーティスティックと書いたが、本当に彼はアーティストのような佇まいを持っている。その彼は最後にこう言った。「もっと美味しいワインを造りたい。しかし正直に言って経済的に芳しくありません。それをなんとかせねばと思っています」。先のブドウの樹で埋め尽くしていない畑の話のように、彼は商業性を一切排除して自分が理想とするワインを造り続けている。はっきり言って儲けていない。 たくさん彼のワインを飲んで、少しでも彼の支援をしたくなる。素晴らしい人格であり、ワインだから。 ～リアルワインガイドより抜粋～
ディディエ・モンショヴェ。ブルゴーニュにおけるヴィオディナミの先駆者の一人として、必ず名前が挙がる生産者だ。驚くことに、合う度に彼の雰囲気が変わるのだが、最近はロングヘアーのヒッピー風に変身し、ブルゴーニュの生産者の中でも独特のオーラを放っている。 だが変わったのは風貌だけではない。ワイン、特に赤は、2001年ミレジムあたりを境にして何かが変わった。以前の彼はフランス語で言う「ZEN」(日本の「禅」である)、つまりナチュラル・クール・シンプル。「不要なものを見事にそぎ落とした」という言い方もできたが、ZENが行きすぎ、「ワインの楽しさ」といったものからは少し遠い気がした。1人で静寂の中で飲むにはいいが(「このミネラルはなんぞや？」的な)、友人の誕生日に手土産に持って行くには少々難しすぎるといった感じだろうか。 だが最近の彼のワインは、従来のナチュラルさに磨きをかけながらも、なんだか春の日だまりみたいに柔らかく微笑んでいる。私はもちろん、モンショヴェのプライベートライフなどは知らない。でもそれはストイックにビオディナミを追求してきた生産者が、ある次期ふと高いレベルを乗り越えて、初めて見せた真のゆとりのようなものではないかと感じている。 彼の今のワインには、自然派ワインの美点がぎっしりと詰まっている。その1つが「口の中のフンワリと満たすピュアな果実味や滋味・旨味、優しい喉越し、そしてミネラルを感じる自然な長い余韻」である。彼のワインの香りをワイン用語的に表現することはもちろん可能だが、いい意味で「何か突出した香り」があるわけでなく、喜びはむしろ口に含んでから花開く。かのヴォギュエ(シャンボール・ミュジニー)の醸造責任者フランソワ・ミレは「香りやテクスチャー(骨格)は人工的に作ることはできるが、余韻を作ることはできない。そこにはワインの本質が表れる」といった。余韻まで美しい彼のワインを飲むと「テクニカル・ワインの対極にある味わいはどういうものか」ということがダイレクトに理解できる。 ～リアルワインガイドより抜粋～