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1895年からワインづくりをするジルベール・ピク家は、シャブリの町の南東に位置するシシェ村で、シャブリとプルミエ・クリュをあわせて10ha所有し、父親、長男ディディエ（'58年生まれ）、弟パスカル（'62年生まれ）の３人で耕作する全くの家族経営の生産者です。'06年からは選果テーブルを導入、またアルコール発酵に天然酵母を使うようになりました。グラン・クリュやプルミエ・クリュの著名な畑をもっていませんので、ロバート・パーカーJr.等の評論家には知られていませんが、「クラスマン」や「ギィド・アシェット」などに掲載され高い評価を得ています。フランス国内では特に良く知られており、ジャンマリーラヴノーやルネ・ヴァンサン・ドーヴィサらと同格に見なす人すらいます。 私どもはこのドメーヌを訪れて初めて、品質のよいシャブリがいかに長くいい状態を保ち続けるか、身を持って知らされました。訪問するたびに、まず畑ごとに分かれているタンクから新しいワインをテイスティングし、そして過去へ10年位さかのぼって比較試飲するということを、いつもディディエ　ピクはやってくれます。10年以上経ったノーマルシャブリですらすばらしい状態をキープしています。 フランスのソムリエが選ぶノーマルシャブリベスト5には、必ずといってよいほどピク家が選ばれます。 厳しい評価で知られるル・クラスマンは、 シャブリの「ヴィエイユ・ヴィーニュ」の質の高さで名が知られるようになったドメーヌ。その「ヴィエイユ・ヴィーニュ」は繊細なミネラル質の味わいに人気が有り、常にその期待を裏切らない仕上がりとなっている。 このドメーヌの畑からは実に力強い味の実が取れるのだが、ピック親子はそれをうまく抑える工夫をしており、バリック樽で澱引きせず、豊満なワインに仕上げるといった手法は取らず、あえて発酵槽を使って新鮮さを残そうとしている。「ヴィエイユ・ヴィーニュ」の味わいもそうした工夫から生まれたものである。 また品揃えの充実に貢献しているのが2種類のプルミエ・クリュだが、「ヴォーグロ」はかすかな塩味、「ヴォークパン」はまろやかでコクのある造りが特徴で、どちらも比較的長く保管できるワインである。 ※ヴィエイユ・ヴィーニュ：ブドウの樹は一般に30年で植え替る。30～50年の樹齢のブドウから造ったワインをこのように表示するのが最近流行している。樹の生産量は落ちるが味わいに渋みが出る。	シャブリ プルミエ・クリュ “ヴォグロ” 2011年 淡く輝きのある黄色。塩っぽいカキやほたて貝の殻の強いアロマの中に、砕いた岩のニュアンスが所々に隠れている。生姜の香りが鼻から口の中へと抜ける。リッチで心地よく、ドライな舌触り。非常に豊かで、口を覆い尽くすような柑橘系の果実味がいっぱいに広がる。ヨードや塩っぽいノートがピュアな印象を強めているが、少なくともあと4～5 年は瓶熟させたほうがよいことを示唆している。2008 年と同じようなアロマの個性を持っているが、こちらのほうが、さらに力強く、肉付きがよい。