「 春美さん、とっても素晴らしいワインがあるの。
今度ボルドーに来たらぜひ彼を紹介したいから、楽しみにしててね。 」
彫刻の森っぽく
お昼をご馳走になり、88をいただきました。
まだまだ強いけど、かなり熟成し、美味しい~!
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まず、1999年のオーラリヴォー。
熟し始めて、香りが複雑になってきていてイイ感じ。
渋みはまだまだしっかりして、これは明日くらいに柔らかくなりそうな気配。
続いて、2000年、これも純粋なフルーツの香り高く、なかなか気品に
満ちて、まるでブルゴーニュのような風合いです。
フルーティで可愛らしい2001年、甘く分かりやすく色香漂う2003年。
調和とまとまり、既に大人びている2004年、完熟で完璧で、
歴史に残りそうな2005年。
オーラリヴォーは緻密でギュッと詰まり、男っぽいブルゴーニュスタイルです。
そしてお待ちかねのムーラン・ペイ・ラブリ97、99、00、01、02、
03、04、05とどんどん続けるのですが、これはまた全く違うテイスト。
10年ものの97、99はもうフルーツとアルコール、華やかな香りを
身にまとい、調和があって、とても美味しい!
00年はフルーツがエレガントで驚くほどピュア、しかもこの上なくスムース。
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「 10年前、コーニー&バロー社からここに来て、このワインの
大ファンになったわ。
この緻密で精巧な味わいで、グレゴワールは完璧主義者なのが分かるでしょ。
あのR・パーカーJrもここのワインが大好きなのよ。」
ガビィさんの言葉どおり、その他のいずれのヴィンテージも
ムーラン・ペイ・ラブリは柔らかく、しっとりとして、しかも水水しさと
若さをあわせ持ち、少しも華やかさを失ってはいないのです。
弾力があって、表面張力が高く、長く長く熟成していく大器の
素養を持ちながら、口当たりはやはりブルゴーニュ系で果実が大爆発!
グレゴワールさんにしか作れない、 これまで飲んだことのない、
ボルドーの異端ともいえる輝きにすっかり私も魅せられてしまいました。
ワインについて白熱するふたり
「オーラリヴォーが精緻で力強く男性的、ペイラブリはフェミニンで
弾力があってしなやかで、こんなに違うという事にびっくりです。」
丘のてっぺんだけあって、けっこうな急勾配です。
古木でぎっしり
立派な古木は整枝も完璧に
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「でしょう。
地盤は石灰粘土質なのだけれど、石灰質砂岩の土台の上にペイラブリは
のっかていて、オーラリヴォーは石灰砂利質が混ざっているので
似ていながら全く違うスタイルになってしまう。
僕はこの違うということをとても大切にしています。
ペイラブリとオーラリヴォー、畑の位置がそれほど離れていないのに
こんなに違いが際立つとは、これこそテロワールでなくてなんでしょう。」
「素晴らしく美味しい、それだけが一緒ですね。」
「ハハ、だったらいいですね。」
いずれもひとつひとつ調和とまとまりがあって、どれを分けてもらえば
いいか迷うところですが、一番美味しいところがはっきり今わかる
ヴィンテージをいくつか選び、グレゴワールさんに打診をしました。
「 あと、どれくらいあるのか、ちょっとチェックしてから、
また返事を改めてしてもいいかな。
もちろん君は、ガビィのお弟子さんだから僕もできるだけの
協力をしたいと思っているのだけれどね。 」
「はいっ、グレゴワールさんよろしくお願いします!」
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この後、シェと畑を見学。
温かな暖炉の試飲室の横手の棚をギイィィ~ッと開けると、
なんとお隣にメチャ小さなシェが突如として現れました。
4月上旬、まだまだ寒い
ここを開けると、ほらシェの入り口
醸しはセメントのタンクで、いかにもゆっくりと自然にまかせてブドウの
エキス分を壊さないようしっかり抽出したいという、配慮が見受けられます。
新樽はタランソーなどボルドーでトップクラスのものを30%、
畑は古木部分がいくらかあり、古いものは65歳から45歳。
実はグレゴワールさん、ムルソーの有名な作り手、マトゥロ氏と大の仲良しで、
意気投合して以来、頻繁に飲み会を楽しんでいるのだそうです。
やっぱり蔵もアートな空間に
ブルゴーニュのようなエレガントなワインを作りたい、そういう彼の
言葉には、手作り感を大切にした職人にしか作れないものを
とても愛していることが感じられました。
「ドイツワインもまだまだ職人芸の冴えたワインが残っていて、
毎年ドイツで展示会があるけど、あれは気になるね。」
ロバート・パーカー氏からも注目され、アシェットガイドや
ベタンヌ氏の評価本でも★つきで好評。
さて、実はここのワインコンサルタントは、あのゴッドハンド、
「ミシェル・ロラン」氏でした。
もともと北フランス出身だったグレゴワールさんが異業種の
ワイン作りに入ったのが20年前。
この短期間によくぞここまで練り上げられた高級感溢れるワインを
フロンサックというかつてポムロールの衛星区としてパッとしなかった
土地で作れたものだなぁとその根性に感服。
畑は、あたかもカンバスと同じ。
描き手次第で、どんな名画も誕生させることが可能なのだ、
ということをしっかり教えてもらった気がしました。
グレゴワールさんの愛猫「ピカ」、由来はピカチュウだそうです
名前を聞き忘れてしまいました・・・。
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