ガビィさんの車は、勢いよくサンテミリオンに入り、
シャトー・ロジエールにいよいよ到着しました。
おー、減農薬農法のその名のとおり、春の畑はお花盛り、
淡い緑とのコントラストが本当にきれい。
太い年季の入った古木に、良く見れば可愛い蕾がちらほらついております。
これがあのまったりした美味しいワインに変身するんだぁ。
なんだか、早くもコクたっぷりのロジエールが飲みたくなってきました。
ガビィさんがオーナーのサビィさんを探しにシャトーの横手に
行くのと同時に、反対側からサビィさんが出てきました。
おーい、こちらです~!
大きく手をふるサビィさんと、それに応えるガビィさん、握手でご挨拶です。
セラーに真っ先に案内してくれることになり、私としては到着した
時から、2005年の出来栄えをとっても楽しみにしていたので、
ワクワクしながらの入場です。
「うちはフランス革命の時から、ここを持っておりますから、
私で9代目になります。」
18世紀からの、やっぱり歴史のある蔵なんだ、そうだよね、
ワインはかなり重厚で伝統的だもの。
すべてが一家族の経営ということで、オーナーの一人、
ジャン・フィリップ・サビィさんが、
「うちのタンクも古くから使っているもので、セメントタンクです。
奇妙な事に、ちょっと前までどこもかしこもステンレスのイノックスタンク
ばかりが流行していたんですが、ここ最近このセメントタンクにやり返る
シャトーがけっこう増えてきました。」
セメントはゆるやかで自然な醗酵を促すため、
ワインの風味によい意味の密度を与えてくれますので、
ロジエールではずっとこれなんですが、流行ってくるとは意外だったそうです。
「タンクの内側の壁面にはエポキシの樹脂で塗装したりもするのですが、
これは古くなると衛生的な醗酵に問題が出てくることもあるので、
私のところでは、内壁には酒石酸を塗っています。
天然成分でもあり、不衛生になるというリスクもこれで解消です。」
タンクひとつでもあれこれ工夫があるんですね、ふむふむ。
樽のお部屋に案内してもらい、古いワインをストックしてあるセラーに移動しました。
おお、これはあのビッグヴィンテージ、1975年もの!
お、こちらには88年、あちらには82年、いいもの一杯で、思わず目移り。
うーん、どんなお味なのか試してみたいですね。
さて、いよいよ2002、2003、2004、2005年と
4本垂直試飲です。
02はまだまだ力がみなぎっていて、濃い!
しかし香りが複雑さを帯びて、やっと飲み頃の入り口に入った感があります。
なかなかアロマティックで魅力的ですね、いいなぁ。
03はボディがでかい!!
コクがたっぷり厚みとパワー全開で飲み応えがドシンッときて、
さすが超ビッグな年らしい。
04は、つ、強い、まだまだまだまだ強すぎ!!
相当な重厚感は、やけに物分りのいい甘口サンテミリオンを
ぶっ飛ばしそうなパワーで、古典的ながっちりタイプ。
重みのあるのが大好きな方ならはまりそう!
そしてお目当ての2005は、うわ~~~っ、色が本当にもう
きれいな赤紫で、真中は真っ黒!
これは大きな大きな身体で、まだずっと先でないと落ち着かない様子ですが、
フルーツがギュウギュウの密度でたっぷりと抽出されている傑物。
どんな艶やかな姿に変身するのか、先が大変楽しみな仕上がりです。
2005年は冬が長く冷たかったのですが、ワインはできるだけ自然な醗酵を
心がけているので、温度コントロールも自然にまかせて特に調整はしなかった
そうです。
しかしそれが却って、いつもよりゆっくり醗酵を促すことになったので
密度の高いよい形のワインができたとか。
ヴェリタスでロジエールのワインをお飲みになられた方は既に
ご存知かと思うのですが、ロジエールの香りも風味もフルーツぎっしり、
樽チョコぽってり甘ささえ感じるワインです。
この日の試飲した4つもそうなのでしたが、サビィさんのお話に
よると、なんと残糖分が0グラムで、完全発酵させてあるとのこと。
ワインはトロミがあって甘くさえ感じるのに残糖がゼロ。
ってことはこれみんな、凝縮果実の本物の美味しさ!!
はぁ~、アルコールが高すぎてやたら甘さを強調したワインも
いっぱいある中、ロジエールでは正直果実味で一本勝負!
いや~、美味しいはずです!
ごまかしなしの本物の果実丸ごとなんですから!!
こんなに美味しくなる秘訣はなんですかサビィさん?
「毎日働くことがとても大切なんです。
畑で毎日、蔵でもすべての作業を完璧にやらなければ。
どのステージも完璧であってこそ、この味が守られるのです。」
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