その日、ビルヌーヴにあるフランス農学研究所ことINRAにタクシーで到着。
あるある、入り口には、「INRA」のプレートが。
ここは国立農学研究所。
当然、しゃれたシャトーはどこにもありません。
オフィスに入っていくと、広報担当のクレマン・ブリエさんが
にこやかに迎えてくれました。
早速INRAご自慢のクーアンの畑を見せていただくことになり、
なだらかなグラーヴの丘のスロープの上部から中低部にかけて、
赤15ha、白7haが面一で一枚の畑となっています。
丘の一番いいところを全部陣取るINRAの畑
クーアンの畑は16世紀に既にカルボニュー侯爵のものでした。
ここの区画名、「クーアン」はガスコーニュの方言で、
「=限定された」の意味をもっています。
この偉大なテロワールを研究するために1968年に当時のオーナー、
アナピエ・ガスクトン家から、INRAが買い取りました。
INRAは農学研究分野において世界ランキング第二位に位置する
優秀な人材の宝庫です。
現在、ワインのコンサルタントにはあのボルドー大学の醸造学の
大権威、ドニ・デュブルデュー博士、そしてエノロゴには
ドミニク・フォルジュ氏がついています。
ベストワインのポテンシャルをもつテロワールから自然環境との
和合を考えた合理性の高い栽培を確立する研究とその取り組みが
日夜なされています。
ちょうど、私が訪れた日も、全国の大学、農学高校などから先生方が
こられて地質の採掘調査にいそしんでいる最中でした。
赤い部分は古い地層です。
INRAでは、畑の世話やその他の観測など職員以外にも、
世界全土から研究者がやってきてボランティアで作業を
進めているそうです。
国家プロジェクトに基づく豊富な人材と財源、
そして最高のテロワール。
これで、クーアンのワインが高品質でないはずがありません。
クーアンの畑はヴィルヌーヴの町を見下ろす砂利質の丘の上に位置し、
ここの地質こそは、カベルネ・ソーヴィニョンの理想といわれています。
砂利質の他、粘土石灰を配合した斜面も含み、これらはメルローや
ソーヴィニョン・ブランに最適な土壌でもあります。
これらの絶妙な土壌のコンビネーションが、天然の排水力を保持し、
果実が完熟した時の豊かな芳香と特筆すべき深さを
赤ワインにも白ワインにも与えてくれるとのこと。
減農薬農法であることから、1968年から40年近く、
INRAは畑で除草剤などは一度も使用したことがありません。
収穫はもちろんすべてが手摘みで、小さな30kgのバットを
使用し、完熟した部分から何度も手間をかけて摘んでいきます。
38年間、除草剤は一度も使用していません。
一年365日、畑に人の姿があり、かいがいしくブドウを世話し、
完熟の最高点で摘まれたブドウは、収穫量もわずかに35hlという、
5大シャトーが55~40hlなのに比べても更に低い収量です。
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