右と左のグラスに2本のワインを入れ分けてくれ、
「さぁ、これがボワのアッサンブラージュ前の原液です。
まったく違う個性がはっきりと分かるはずです、
試飲してみてください。」
左のグラスは、とってもスムースで黒い完熟した果物の香りに
シナモンの風味がアクセントでなかなか悩ましい。
口に含むと、チョコ、バニラ、カンゾウ、の甘い香りが
添えられて口当たりはとってもクリーミーでグー。
しかし難をいうと、ちょっと腰が据わらない気もします。
右のグラスは、野生の黒すぐりのコンフィチュール。
口の中で、細やかですが、強い渋みが広がります。
フルーツの厚みがあって甘くないブドウの完熟汁を
口に含んでいるようななめらかさで存在感があります。
「これは?」
「左がメルローで右がカベルネ・ソーヴィニョンです。」
こんなにはっきりとふたつの個性が出ていることに びっくり。
「ええっと、ボワのセパージュはなんでしたっけ?」
「カベルネ・ソーヴィニョンが66%、メルロー27%です。」
どれどれ、右のカベルネグラスに左のメルローを3分の一ほど
入れてミックスしてみました。
そして飲んでみますと・・・
あの厳しかったカベルネさんが、やわらかな微笑みをお口の中で
描いているように、ググッとまろやかになりました。
ああ、これかぁ、これだよね。
やっぱり個性を合わせて、良いところをさらに良く、足りないところを
うま~く補って、これがアッサンブラージュの極意なんだ。
美味しくなっただけでなく、ワインに豊かさが現れたのには
ちょっと感動してしまいました。
「わぁ、美味しくなりました。
ほらほらガビィさんも飲んでみて。」
「どれ、まぁ、なるほど悪くないわ。
これはハルミさんオリジナルね。」
おすまし顔のギエムさんが初めてクスクス笑いました。
新樽率は90%でかなり高い数字ですが、ボワは決して樽すぎてはいません。
それというのも、ブドウの樹齢はそろそろ平均でも41歳、
充実した美味しさを醸し出せる魅力ある年頃です。
ふと壁に目を移すと、1947年もののボワ・カントナックが
エリザベス皇太后陛下ご臨席の午餐に供された栄誉を祝した
記念写真が試飲室に掲げられていました。
この栄誉を再び手に入れるのもそう遠くないかも知れない。
それを感じさせる2005年の手ごたえでした。
これからももっと人気があがるかも、ボワはますます快調です!
|