セラーに入って、2000年、1999年のロートブッフを試す。
その後2000年、1999年、1995年のロック・デ・コンブを試した。
ぶどうのアロマの爆発力、タンニンの細かさはミクロの世界、
果実味の深さはブラックホール。
うまみに吸い込まれるようなものすごい力は、もう絶句するしかない。
どうですか?
味覚を通して真っ直ぐマッハで心臓に届くこの人のワインに、
私なんぞが語れる言葉はなかった。
しどろもどろでそのことを言うと、ミジャヴィルさんは奥から
ドゥミボトルを持ってきてさっさと抜いた。
呼吸をするほど自然な仕草でつがれたワインは
89年のロートブッフだった。
溶け合った何もかもと大地から恵まれたあらゆる命をミジャヴィルさんが
見事に取りだした、それは泣きたくなるようなワインだった。
このワインを飲みたい人が、飲ませたい人がきっと世界中にたくさん
いるだろうに、自分にふるまわれたことがもったいなくて、
私は大恐縮で感謝と敬意を述べた。
たくさんの時間を本当にありがとう、うんと忙しい日でとてもお疲れ
でしょうに、と添えて。
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