- 著者 : 裴寛紋(著)
- 出版社名 : 笠間書院
- 発行日 : 2017年06月
- ISBN : 9784305708342
- 日本思想史上での宣長再評価に向けて。
『古事記伝』は『古事記』の解釈を通して、宣長による新たな神話を成立させたテキストであった。つくり出された〈古事記〉はいかなる物語となったのか。『古事記伝』の読みが『古事記』と最も乖離している箇所「外国(とつくに)」に着目し、ひるがえって、自国日本に対して用いた語「皇国(みくに)」の意味を追究する。神について語る『古事記』を、人に適用して読もうとした『古事記伝』の本質が明らかに。
【日本最古の書物や国民の古典として知られる『古事記』も、本居宣長の『古事記伝』も、昭和の戦争期を経由するまでは一般の人々に重んじられる書物ではなかった。それはちょうど、近代的学問の一つとして国文学が形成され、国文学科のなかで『古事記』が本格的に研究されることとも深く連動している。国文学が「国民の学」を担う際に、国文学者は国学との連続性をことさら強調した。……近代日本において国文学が国学という伝統を背負って誕生するところに、近代的学問としての宣長「学」の発見もある。……しかしながら、宣長の学問と思想とを峻別する「宣長問題」といったような問題設定はあまり有効ではない。……再考すべきは、宣長の「皇国」を国学的な思考の典型として批判しながらも、宣長「学」の方法を様々な近代学問の伝統として受け入れようとした国文学の方かも知れない。……国学から国文学へと単純な延長線の上に宣長を置くことから一旦離れてみる。それは近代学問の在り方そのものに対する批判的な省察の契機にもなるはずであろう。】……「はじめに」より※本データはこの商品が発売された時点の情報です。
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