- 著者 : 東郷青児(著) 野崎泉(編)
- 出版社名 : 創元社
- 発行日 : 2018年03月
- ISBN : 9784422930787
- 昭和を駆け抜けた画家・東郷青児の知られざる“文筆”世界《生誕120年記念》*《夢か現(うつつ)か――》少女の生態や恋愛をテーマに、東郷青児の“ことば”がもっとも魅力的に綴られた詩的で夢幻的な文筆作品を精選。かつて発禁処分となった幻の著書から厳選した珠玉のエッセイや小咄コント、新たに発掘された単行本未収録原稿を含む決定版、全38篇。[解説:野崎泉]*********寄稿:小西康陽(音楽家)「恋愛を人生の総てと考える人々」*********(収録作品より)「東京の女」 東郷青児暖炉の燃える暖い部屋で、ゆつたりした部屋着を着て、香りの高い珈琲を飲みながら雪の音を聞いてゐるなんて、悪くない感じだ。もつと考へなければならないことが山ほどあるに違ひないけれど、美しい女のひとを美しい枠の中に置いて、美しくすることが男の義務でもある。肩のぬけた浴衣を着て、かたいふとんの中で震へてゐるやうな女がこの日本に居る限り、男よ、偉さうな口を利かないで呉れ。これからの建設は何よりも何よりも女を美しくすると云ふ、最終の目的に向つて進んでゆくことだ。石炭も、米も、繊維製品も電車も汽車も、住宅も道路も彼女たちを輝しく明るく美しいままに美しくするための過程に過ぎない。ああ、そんな日が早く来て呉れ。※本データはこの商品が発売された時点の情報です。
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