- 著者 : 笠井秀明(著) 岸浩史(著)
- 出版社名 : 大阪大学出版会
- シリーズ名等 : 大阪大学新世紀レクチャー 計算機マテリアルデザイン先端研究事例 2
- 発売日 : 2012年09月
- ISBN : 9784872592559
- 統計的相関,力学的相関のため,金属中の電子はその周りに正孔を伴って運動している.金属から真空中へ電子を取り出そうとすると,この正孔が抵抗する.仕事関数の主な原因である.それでも,電子を取り出してしまうと,正孔が取り残される.これと電子間に鏡像力が働く.金属と真空との境界近傍の一つの現象である.
絶縁体の電子の運動は,どうか.価電子帯の電子は正孔を伴っているのでエネルギーが低いが,伝導体の電子の周りには正孔がないのでエネルギーが高くなる.この差がバンドギャップの主な原因である.このような絶縁体と金属との境界付近では,金属電子が絶縁体の価電子帯の正孔を遮蔽するので,バンドギャップを消失する.界面近傍で見られる金属・絶縁体転移である.
このように,異なる物質の境界では,電子状態の多様性を見出すことができる.物質を構成する原子も境界近傍では,多様な振舞いを見せる.ここで取り上げる抵抗変化メモリでは,このような電子・原子の多様性をうまく利用しようとしている.
本著では,計算機マテリアルデザイン(CMDR)による先端研究事例IIとして,抵抗変化メモリの知的材料設計をとりあげ,絶縁体のバンドギャップの変化や異なる物質の境界(電極/遷移金属酸化物界面)における電子・原子の状態変化が,どのようにデバイスの動作に結び付くのかについて紹介する.読者の皆様には,電子・原子といった微細なスケールから物理現象を明らかにし,デバイスをデザインする面白さを実感して頂きたい.
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